供述弱者
供述弱者とは
「供述弱者」とは、取調べにおいて自己の権利を十分に理解・行使できず、捜査官の誘導や圧力に対して脆弱な立場に置かれる被疑者を指す。具体的には、知的障害のある人、精神障害のある人、日本語を母語としない外国人、未成年者、高齢者などが該当する。
なぜ虚偽自白に至るのか
### 迎合傾向 知的障害のある被疑者は、権威者の質問に対して「はい」と答える傾向(迎合傾向)が強いことが心理学研究で示されている。氷見事件の柳原浩氏は、取調官に「捨てたんだろ」と言われて「はい」と答え、「燃やしたんだろ」と言われてまた「はい」と答えた。靴も凶器も実際には存在しなかった。
### 言語の壁 東電OL殺人事件のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏はネパール国籍で、日本語での取調べで十分に反論することが困難だった。通訳の質や中立性も問題となる。
### 取調べ環境への不適応 湖東記念病院事件の西山美香氏は、取調官との間に擬似的な信頼関係(ラポール)が形成され、取調官を喜ばせるために虚偽の供述を重ねてしまった。
構造的な問題
日本の刑事手続きには、供述弱者を保護する十分な制度的枠組みがない。取調べへの弁護人立会いが認められておらず、適切な支援者(ソーシャルワーカー等)の同席制度も法制化されていない。
用語解説
迎合傾向権威者の質問に対して同調的に応答する傾向。知的障害者に顕著とされる
被疑者ノート取調べの内容を被疑者自身が記録するもの。弁護士が差入れるが、法的義務はない
関連書籍
えん罪・氷見事件を深読みする— 前田裕司・奥村回 編 (2016)
自白の心理学— 浜田寿美男 (2001)
冤罪学— 西愛礼 (2023)
制度改革の動向
弁護人立会い、適切な支援者の同席制度の法制化が議論されている。