冤罪マップ

足利事件

菅家 利和

1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店の駐車場から4歳の女児が連れ去られ、翌日、近くの渡良瀬川の河川敷で遺体が発見された事件。1991年12月、当時45歳の菅家利和が逮捕された。当時の精度が低いDNA型鑑定と、長時間の取調べによる虚偽自白が有罪の決め手となり、2000年に無期懲役が確定した。

菅家は服役中も一貫して無実を主張し続けた。弁護団の粘り強い活動により、2008年に最新のDNA型鑑定(STR法)が実施され、犯人のものとされたDNA型と菅家のDNA型が一致しないことが科学的に証明された。2009年6月、東京高裁が再審開始を決定し、菅家は約17年半ぶりに釈放。2010年3月26日、宇都宮地裁で再審無罪判決が確定した。

足利事件は、DNA鑑定技術の進歩によって冤罪が証明された日本初の事例であり、科学鑑定の信頼性と初期の鑑定技術の限界を社会に問いかけた。また、取調べの可視化や証拠開示制度の議論を前進させる契機ともなった。

逮捕年
1991
無罪確定年
2010
期間
19年
確定判決
無期懲役
都道府県
栃木県
地域
関東
捜査機関
栃木県警
時代
現代
刑事手続き進行度
捜査
逮捕
起訴
一審
控訴審
上告審
確定
服役
再審
逮捕起訴一審有罪確定服役再審無罪
通過有罪等無罪等進行中

DNA型鑑定の誤りにより有罪。菅家氏は知的なハンディキャップがあり取調べで不利な立場にあった。再鑑定で不一致判明、2010年無罪確定。

事件発生
1990
被告人
菅家 利和
判決
無期懲役
現在のステータス
無罪確定
冤罪の原因
DNA型鑑定の誤り、自白強要、供述弱者
支援
日本弁護士連合会

タイムライン

事件不利有利手続事後
1990.05事件発生

5月12日、栃木県足利市のパチンコ店駐車場から4歳女児が行方不明。翌13日、渡良瀬川河川敷で遺体発見

1991.12菅家利和 逮捕

12月2日、DNA型鑑定の一致を根拠に菅家利和を逮捕

当時のDNA型鑑定技術では1000人に1.2人の確率で別人でも一致する可能性があった。取調べで虚偽自白に追い込まれた
1993.07一審 無期懲役

7月7日、宇都宮地裁(池本寿美子裁判長)が無期懲役判決

菅家は第6回公判で否認に転じたが、DNA鑑定と自白により有罪認定
1996.05控訴審 控訴棄却

5月9日、東京高裁が控訴を棄却。弁護団が再編成され無罪を主張したが退けられた

2000.07上告棄却・無期懲役確定

7月17日、最高裁第二小法廷が上告を棄却。7月27日、無期懲役確定。千葉刑務所で服役

弁護側はDNA再鑑定を求めたが認められなかった
2002.12再審請求

宇都宮地裁に再審請求

2008.02再審請求棄却

宇都宮地裁が再審請求を棄却。東京高裁に即時抗告

2008.12.24DNA再鑑定命令

即時抗告審で東京高裁がDNA再鑑定を命じた

2009.05.08DNA再鑑定で不一致判明

被害者衣類由来DNAと菅家氏のDNAが不一致とする鑑定書が即時抗告審に提出

2009.05.19弁護団が刑の執行停止を要請

弁護団が検察官に刑の執行停止を求めた

2009.06.04刑の執行停止・釈放

東京高検が「無罪の蓋然性が高い」旨の意見書提出等を受け刑の執行停止を指揮し、菅家氏が釈放された。再審開始決定前の釈放は異例

2009.06.11栃木県警が謝罪コメント発表

栃木県警本部長名で謝罪趣旨のコメントが発表された

2009.06.12国家公安委員長が謝罪趣旨発言

佐藤勉国家公安委員長が閣議後会見で謝罪趣旨の発言

2009.06.17栃木県警本部長が直接謝罪

栃木県警本部長が菅家氏に直接謝罪

2009.06.23再審開始決定

東京高裁が再審開始を決定

2009.10.05宇都宮地検検事正が直接謝罪

宇都宮地検検事正が菅家氏に直接謝罪

2009.10.21再審公判 初公判

宇都宮地裁で再審公判の第1回公判が開かれた

2010.01.21取調べ録音テープ再生・元検事証人尋問

再審公判で取調べ録音テープが再生され、取調べ担当の元検事の証人尋問が行われた

2010.02.12検察が無罪論告し謝罪

再審公判第6回で検察側が無罪判決を求める論告を行い、謝罪趣旨も述べた

2010.03再審無罪

3月26日、宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)が再審無罪判決。即日確定

裁判長が「17年半もの長きにわたり自由を奪ったことを誠に申し訳なく思います」と謝罪。3人の裁判官が頭を下げた
裁判長:佐藤正信
2010.04.01警察庁・最高検が検証報告書公表

警察庁と最高検が足利事件の検証報告書を公表

2010.09.22刑事補償を請求

刑事補償法に基づき約8000万円の刑事補償を宇都宮地裁に請求

2011.01.13刑事補償決定

宇都宮地裁が刑事補償として約8000万円相当の支払いを決定(拘束日数6395日)

事件に関わる言葉

裁判官・当事者・家族・支援者・訴追機関などによって記録・公表された発言のうち、 この事件の理解に重要なものを引用しています。

当事者発言より要レビュー

17年半を思えば、1分少々(の論告)では物足りない。謝罪はあったが、1分少々では腹の底から謝ったとは思えない

菅家利和元被告人本人2010-02-12

再審第6回公判で検察官が無罪を求める論告の際に謝罪したことへの、公判後の記者会見での反応。

出典:Wikipedia(二次資料経由)足利事件2026-04-19 記事を読む ↗
判決文より

菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず、17年半もの長きにわたり自由を奪ったことを誠に申し訳なく思います

佐藤正信裁判長宇都宮地方裁判所 裁判長2010-03-26

再審無罪判決を言い渡した後、3人の裁判官が起立して菅家利和氏に頭を下げて謝罪した際の言葉。

出典:日本弁護士連合会足利事件2010-03-26 原文を読む ↗

参考リンク

参考WikipediaWikipedia
公的機関足利事件 - 日本弁護士連合会日本弁護士連合会

参考文献

自白の心理学
自白の心理学
浜田寿美男 (2001) — 書籍

なぜ無実の人が自白してしまうのか。虚偽自白の心理学的メカニズムを解明した研究書。

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冤罪学
冤罪学
西愛礼 (2023) — 書籍

元裁判官の弁護士が冤罪の原因・予防・救済を体系化した基本書。法律・心理学の両面から冤罪メカニズムを分析。

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殺人犯はそこにいる
殺人犯はそこにいる
清水潔 (2013) — 書籍

足利事件を含む北関東連続幼女誘拐殺人事件を再検証し、冤罪の背後にある捜査の失敗と真犯人の影を追う調査報道の記録。

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冤罪をつくる検察、それを支える裁判所 そして冤罪はなくならない
冤罪をつくる検察、それを支える裁判所 そして冤罪はなくならない
里見繁 (2010) — 書籍

30年間テレビドキュメンタリーを制作してきた元MBS記者・里見繁が、現地取材やドキュメンタリー番組の放送をもとに9件の冤罪事件をルポ。布川事件、足利事件、飯塚事件、京浜急行・痴漢冤罪事件、袴田事件、日野町事件、福井・女子中学生殺人事件、浜松幼児せっかん死事件、大阪高槻市・選挙違反事件を収録。日本の司法制度の構造的欠陥から冤罪が生み出されると論じる。インパクト出版会刊。

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