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広島駅ビル痴漢冤罪事件

飯島滋明(名古屋学院大学准教授・憲法学)

不当な刑事手続不起訴・釈放

2011年5月3日夜、名古屋学院大学准教授(憲法学)の飯島滋明さんは、婚約者とその両親と4人で広島を旅行中、婚約者のために牡蠣を食べられる店を探して1人で広島駅周辺を移動していた。狭い歩道をふさぐように歩く高校生の集団とすれ違った際、集団の隙間を通り抜けようとした飯島さんに、自転車を押して集団と並走していた女子高生が接触した。

その後、駅ビル内で婚約者に電話をしていた飯島さんは、背後から警察官2人に取り押さえられた。逮捕令状の提示を求めるなどしてもみ合いになったが、婚約者の目の前で現行犯逮捕された。容疑は広島県迷惑防止条例違反で、女子高生の太ももや腰を触ったというものだった。逮捕の根拠は、被害を訴えた高校生らの供述のみで、警察が行った微物・DNA鑑定では付着物は検出されず、アルコール検査の数値も飲酒運転基準の10分の1程度に過ぎなかった。

当番弁護士の接見を経て弁護団が結成され、「痴漢行為はあり得ない」とする意見書の提出や担当裁判官との面談など迅速な弁護活動を行った結果、裁判所は検察の勾留請求を却下した。検察官も準抗告をせず、飯島さんは逮捕翌日の午後5時ごろ釈放された。弁護団はその後も検察官との面談を重ね、客観的証拠の不存在や供述の不自然さを説明し、同年8月24日、広島地検は飯島さんを不起訴処分とした。

一方、報道各社は逮捕当日、警察発表のみに基づき、飯島さんの実名と勤務先の大学名を含めて全国的に報じた。その内容には、実際にはシラフに近かったにもかかわらず「酒に酔っていた」(NHK・読売新聞等)、実際には婚約者家族との旅行中だったにもかかわらず「休暇で一人で広島を訪れていた」(毎日新聞)といった、警察に取材した上でも事実と異なる記述が含まれていた。地元紙の中国新聞のみが、司法担当記者の判断で被告人を仮名で報じた。不起訴となった後もインターネット上には逮捕時の報道が残り続け、飯島さんの名誉は不起訴後も損なわれ続けた。この事件の影響で、同年秋から予定されていたフランスでの在外研究も取りやめになった。

本件は、痴漢事件において警察情報のみに依拠した安易な実名報道が行われ、不起訴という明確な結論が出た後もその報道被害が回復されずに残り続けるという、痴漢冤罪をめぐる構造的な問題を示す事例である。

逮捕年
2011
解決年
2011
期間
0年
確定判決
広島県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕 → 勾留請求却下 → 検察が準抗告せず釈放 → 不起訴処分(2011年8月24日)。起訴・公判には至らなかった。
都道府県
広島県
地域
中国
捜査機関
広島県警
時代
現代
刑事手続き進行度
捜査
逮捕
起訴
一審
控訴審
上告審
確定
服役
再審
犯人視任意同行逮捕不起訴
通過有罪等無罪等進行中

2011年5月3日夜、名古屋学院大学准教授(憲法学)の飯島滋明さんは、婚約者とその両親と4人で広島を旅行中、婚約者のために牡蠣を食べられる店を探して1人で広島駅周辺を移動していた。狭い歩道をふさぐように歩く高校生の集団とすれ違った際、集団の隙間を通り抜けようとした飯島さんに、自転車を押して集団と並走していた女子高生が接触した。 その後、駅ビル内で婚約者に電話をしていた飯島さんは、背後から警察官2人に取り押さえられた。逮捕令状の提示を求めるなどしてもみ合いになったが、婚約者の目の前で現行犯逮捕された。容疑は広島県迷惑防止条例違反で、女子高生の太ももや腰を触ったというものだった。逮捕の根拠は、被害を訴えた高校生らの供述のみで、警察が行った微物・DNA鑑定では付着物は検出されず、アルコール検査の数値も飲酒運転基準の10分の1程度に過ぎなかった。 当番弁護士の接見を経て弁護団が結成され、「痴漢行為はあり得ない」とする意見書の提出や担当裁判官との面談など迅速な弁護活動を行った結果、裁判所は検察の勾留請求を却下した。検察官も準抗告をせず、飯島さんは逮捕翌日の午後5時ごろ釈放された。弁護団はその後も検察官との面談を重ね、客観的証拠の不存在や供述の不自然さを説明し、同年8月24日、広島地検は飯島さんを不起訴処分とした。 一方、報道各社は逮捕当日、警察発表のみに基づき、飯島さんの実名と勤務先の大学名を含めて全国的に報じた。その内容には、実際にはシラフに近かったにもかかわらず「酒に酔っていた」(NHK・読売新聞等)、実際には婚約者家族との旅行中だったにもかかわらず「休暇で一人で広島を訪れていた」(毎日新聞)といった、警察に取材した上でも事実と異なる記述が含まれていた。地元紙の中国新聞のみが、司法担当記者の判断で被告人を仮名で報じた。不起訴となった後もインターネット上には逮捕時の報道が残り続け、飯島さんの名誉は不起訴後も損なわれ続けた。この事件の影響で、同年秋から予定されていたフランスでの在外研究も取りやめになった。 本件は、痴漢事件において警察情報のみに依拠した安易な実名報道が行われ、不起訴という明確な結論が出た後もその報道被害が回復されずに残り続けるという、痴漢冤罪をめぐる構造的な問題を示す事例である。

事件発生
2011
被告人
飯島滋明(名古屋学院大学准教授・憲法学)
判決
広島県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕 → 勾留請求却下 → 検察が準抗告せず釈放 → 不起訴処分(2011年8月24日)。起訴・公判には至らなかった。
現在のステータス
不起訴
冤罪の原因
犯人視報道、目撃証言の問題、見込み捜査

タイムライン

事件不利有利手続事後
2011.05.03現行犯逮捕

広島駅ビル内で、女子高生への迷惑防止条例違反容疑により現行犯逮捕された。逮捕の根拠は被害を訴えた高校生らの供述のみだった。

2011.05.04弁護団が勾留請求却下を求める活動、裁判所が勾留請求を却下

弁護団が「痴漢行為はあり得ない」とする意見書を提出し、担当裁判官との面談を実現。裁判所は検察の勾留請求を却下した。

2011.05.05検察が準抗告せず釈放

検察官は勾留却下に対する準抗告をせず、飯島さんは午後5時ごろ釈放された。

2011.08.24不起訴処分

広島地検は飯島さんを不起訴処分とした。

参考リンク

専門メディア痴漢冤罪事件はなぜ起きるか(その1)水島朝穂(早稲田大学)「直言」

参考文献

痴漢えん罪にまきこまれた憲法学者 警察・検察・裁判所・メディアの「えん罪スクラム」に挑む
痴漢えん罪にまきこまれた憲法学者 警察・検察・裁判所・メディアの「えん罪スクラム」に挑む
飯島滋明 (2012) — 書籍

2011年5月3日、身に覚えのない痴漢容疑で広島にて現行犯逮捕された憲法学者・飯島滋明氏本人による体験記。逮捕から釈放までの経緯に加え、大日本帝国憲法・日本国憲法下での刑事手続の変遷、捜査機関・裁判所・メディアそれぞれの問題点(虚偽自白の強要、令状主義の形骸化、犯人視・実名報道等)を、自身の体験に憲法学者としての専門知識を交えて分析し、冤罪を防ぐための具体策(取調べの全面可視化、弁護士立会い、証拠の全面開示、匿名報道の原則化等)を提言する。

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