思想弾圧
思想弾圧とは
個人の政治思想、信条、言論、結社を理由として、国家権力が刑事処罰を行うこと。日本では主に戦前・戦中期に、治安維持法、不敬罪、大逆罪などの法律に基づいて大規模な弾圧が行われた。
大逆事件(1910年)
社会主義者26名が天皇暗殺計画の容疑で起訴され、24名に死刑判決が下された。12名が処刑されたが、後年の研究で実際に計画に関与していたのはごく少数であり、大半は連座として巻き込まれたことがほぼ定説となっている。非公開裁判、弁護活動の制限、わずか数日の審理など、手続き面でも問題が指摘されている。
横浜事件(1942年)
雑誌論文を理由に編集者・研究者ら約60名が治安維持法違反で検挙された。特高警察による激しい拷問が行われ、4名が獄死した。2009年に免訴が確定し、実質的に冤罪が認められた。
現代への示唆
思想弾圧は「過去の問題」ではない。国家が特定の思想や言論を理由に刑事処罰を行う構造は、形を変えて現代にも存在しうる。戦前の冤罪事件を記録し続けることは、同様の過ちを繰り返さないための重要な営みである。
用語解説
治安維持法1925年制定。国体変革・私有財産否認を目的とする結社を処罰。1945年廃止
特高警察特別高等警察。思想犯の取締りを専門とした警察組織
大逆罪天皇に対する危害を企てる罪。死刑のみ。1947年廃止
関連書籍
大逆事件— 田中伸尚 (2010)
制度改革の動向
日本国憲法により思想・良心の自由(19条)、言論・表現の自由(21条)が保障された。しかし制度的保障と実態は常に一致するとは限らない。