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原因解説/人質司法

人質司法

人質司法とは

「人質司法」とは、被疑者・被告人が起訴事実を否認している限り、身体拘束(勾留)を続け、保釈を認めない日本の刑事司法の運用慣行を指す批判的な用語である。

日本の刑事訴訟法上、勾留の要件は「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」等に限定されているが、実務上は「否認していること」自体が「罪証隠滅のおそれ」の根拠とされ、否認を続ける限り保釈が認められない構造が固定化している。

なぜ冤罪を生むのか

### 虚偽自白への圧力 長期勾留は、無実の被疑者に対して「認めれば出られる」という強烈な圧力を生む。家族との面会制限、仕事の喪失、社会的信用の失墜が日を追うごとに進行する中で、耐えきれずに虚偽の自白をしてしまうケースが報告されている。

### 共犯者供述の汚染 プレサンス事件では、共犯者とされた人物が長期勾留の中で検察のストーリーに沿った供述をし、それが主要証拠となった。人質司法は、被疑者本人だけでなく関係者の供述をも歪める構造を持つ。

### 勾留中の死亡 大川原化工機事件では、共同被告人の一人が勾留中にがんの治療を十分に受けられず死亡した。長期勾留は生命にも関わるリスクをはらんでいる。

国際的な批判

国連人権理事会の作業部会や国際人権団体は、日本の人質司法を繰り返し批判している。特に、否認を理由とした長期勾留、取調べへの弁護人立会いの制限、代用監獄(警察留置施設での勾留)の3点が問題視されている。カルロス・ゴーン事件(2018年)では国際的な注目が集まった。

改革の動向

2016年の刑事訴訟法改正で取調べの録音録画が一部義務化されたが、対象は裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件に限られている。弁護人の取調べ立会いについては、日弁連が繰り返し求めているが、法制化には至っていない。

用語解説

勾留起訴前は最大20日間(延長含む)、起訴後は2ヶ月ごとに更新可能。否認している限り保釈が認められない運用が問題
代用監獄警察の留置施設を勾留場所として使用する制度。取調べを行う警察が身柄も管理するため、自白強要の温床と批判される
保釈起訴後に身体拘束を解く制度。日本の保釈率は長年低水準だったが、近年は上昇傾向
接見交通権弁護人と被疑者の面会の権利。日本では制限が多く、特に起訴前は1日1回程度に限られることが多い

関連書籍

冤罪と裁判今村核 (2012)
私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた村木厚子 (2013)
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制度改革の動向

2016年に取調べ録音録画の一部義務化。弁護人立会いの法制化は未実現。国連人権理事会が繰り返し勧告。