養父である男性Aが、養女Bへの強姦・強制わいせつの容疑で2008年9月に逮捕された。Aは捜査段階から一貫して容疑を否認したが、確定審はいずれの審級においてもAを有罪とした。2009年5月15日、大阪地裁は、Bの供述(虚偽告訴をする事情がないこと、被害を打ち明けるまでの経過に不自然な点がないこと等)と、これを目撃したとするBの兄Dの供述の信用性を認め、Aに懲役12年の判決を言い渡した。控訴審(大阪高裁、2010年7月21日)・上告審(最高裁、2011年4月21日)もBとDの供述の信用性を認め、Aの有罪が確定し服役した。
一審判決後、Bは実母Fやその夫Gに供述が虚偽だったと打ち明けたが、偽証罪に問われるおそれや他の証言者への迷惑を理由に、真実は伏せられた。その後Bは、就職してFらと距離を置いたことや大伯母Eに促されたことを契機に、控訴審弁護人に真実を告白。兄Dも、Bが真実を話したと聞いて自らも虚偽証言を認めた。BとDはいずれも、実母Fとその夫Gから深夜に及ぶ問い詰めを受け、被害を「見た」「受けた」と述べざるを得なかったと証言した。
2014年9月12日、Aは大阪地裁に再審請求。大阪地検の再捜査でBとFの証言が虚偽だったことが確認され、同年11月18日、検察はAの刑の執行を停止して釈放し、「処女膜は破れていない」とする産婦人科のカルテなど客観的証拠に基づき無罪とすべきとの意見書を提出した。再審開始決定前の受刑者釈放は異例で、Aの身体拘束は逮捕から約6年に及んでいた。
2015年2月27日、大阪地裁はBとDの新証言を信用できる新証拠と認めて再審開始を決定。同年10月16日、大阪地裁第1刑事部は、BとDの確定審での供述がカルテという客観的事実と矛盾し信用できないと認定し、Aに無罪を言い渡した。判決は、AがBの目の前の部屋にいた家族に気づかれずに強姦を繰り返すことは考えにくいことなど、旧供述の不自然な点も複数指摘した。
2016年10月5日、Aは、捜査機関がカルテの確認を怠ったことや、控訴審で弁護側が求めた証人尋問を裁判所が却下したことなどを理由に、慰謝料・逸失利益等計約1億4千万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴した。しかし2019年1月8日、大阪地裁はAの請求を棄却。控訴審(大阪高裁、2019年6月27日)、上告審(最高裁、2020年7月14日)でも認められず、国への損害賠償請求は退けられたまま確定した。再審無罪が確定してもなお、国家賠償が認められるとは限らないという、刑事司法における救済の限界を示す事例でもある。
養父である男性Aが、養女Bへの強姦・強制わいせつの容疑で2008年9月に逮捕された。Aは捜査段階から一貫して容疑を否認したが、確定審はいずれの審級においてもAを有罪とした。2009年5月15日、大阪地裁は、Bの供述(虚偽告訴をする事情がないこと、被害を打ち明けるまでの経過に不自然な点がないこと等)と、これを目撃したとするBの兄Dの供述の信用性を認め、Aに懲役12年の判決を言い渡した。控訴審(大阪高裁、2010年7月21日)・上告審(最高裁、2011年4月21日)もBとDの供述の信用性を認め、Aの有罪が確定し服役した。 一審判決後、Bは実母Fやその夫Gに供述が虚偽だったと打ち明けたが、偽証罪に問われるおそれや他の証言者への迷惑を理由に、真実は伏せられた。その後Bは、就職してFらと距離を置いたことや大伯母Eに促されたことを契機に、控訴審弁護人に真実を告白。兄Dも、Bが真実を話したと聞いて自らも虚偽証言を認めた。BとDはいずれも、実母Fとその夫Gから深夜に及ぶ問い詰めを受け、被害を「見た」「受けた」と述べざるを得なかったと証言した。 2014年9月12日、Aは大阪地裁に再審請求。大阪地検の再捜査でBとFの証言が虚偽だったことが確認され、同年11月18日、検察はAの刑の執行を停止して釈放し、「処女膜は破れていない」とする産婦人科のカルテなど客観的証拠に基づき無罪とすべきとの意見書を提出した。再審開始決定前の受刑者釈放は異例で、Aの身体拘束は逮捕から約6年に及んでいた。 2015年2月27日、大阪地裁はBとDの新証言を信用できる新証拠と認めて再審開始を決定。同年10月16日、大阪地裁第1刑事部は、BとDの確定審での供述がカルテという客観的事実と矛盾し信用できないと認定し、Aに無罪を言い渡した。判決は、AがBの目の前の部屋にいた家族に気づかれずに強姦を繰り返すことは考えにくいことなど、旧供述の不自然な点も複数指摘した。 2016年10月5日、Aは、捜査機関がカルテの確認を怠ったことや、控訴審で弁護側が求めた証人尋問を裁判所が却下したことなどを理由に、慰謝料・逸失利益等計約1億4千万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴した。しかし2019年1月8日、大阪地裁はAの請求を棄却。控訴審(大阪高裁、2019年6月27日)、上告審(最高裁、2020年7月14日)でも認められず、国への損害賠償請求は退けられたまま確定した。再審無罪が確定してもなお、国家賠償が認められるとは限らないという、刑事司法における救済の限界を示す事例でもある。
- 事件発生
- 2008年
- 被告人
- 匿名(養父)
- 判決
- 一審:懲役12年(強姦・強制わいせつ、2009年5月15日、大阪地裁)→ 控訴棄却(2010年7月21日、大阪高裁)→ 上告棄却・確定(2011年4月21日、最高裁)→ 再審開始決定(2015年2月27日)→ 再審:無罪(2015年10月16日、大阪地裁第1刑事部)
- 現在のステータス
- 無罪確定
- 冤罪の原因
- 目撃証言の問題、被害者・第三者の偽証、裏付け捜査の懈怠
- 支援
- 日本弁護士連合会
タイムライン
養女Bへの強姦・強制わいせつの容疑で、養父の男性Aが逮捕された。Aは一貫して容疑を否認した。
Aが強姦・強制わいせつの罪で起訴された。
大阪地裁は、養女Bおよび兄Dの供述の信用性を認め、Aに懲役12年の有罪判決を言い渡した。Aは一貫して否認していた。
大阪高裁は、BおよびDの供述の信用性を認め、Aの控訴を棄却した。
最高裁判所が上告を棄却する決定をし、懲役12年の刑が確定した。Aは服役した。
控訴審弁護人による聞き取りでBと兄Dが虚偽証言を認めたことを受け、Aは大阪地方裁判所に再審請求した。
大阪地方検察庁は再捜査によりBとFの証言が虚偽だったことを確認し、Aの刑の執行を停止して釈放。「処女膜は破れていない」という産婦人科のカルテなど客観的証拠に基づき無罪とすべきとの意見書を提出した。再審開始決定前の受刑者釈放は異例で、Aの身体拘束は逮捕から約6年に及んでいた。
大阪地裁は、BおよびDの新証言を信用でき新たに発見した無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたるとして、再審を開始する決定をした。
大阪地裁第1刑事部は、BおよびDの確定審での供述はカルテという客観的事実と矛盾し信用できないとして、Aに無罪を言い渡した。
Aは、捜査機関がカルテの確認を怠ったことや、控訴審で弁護側が求めた証人尋問を裁判所が却下したことなどを理由に、慰謝料・逸失利益等計約1億4千万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
大阪地方裁判所はAの請求を棄却した(大阪地裁平成28年(ワ)第9729号)。
大阪高等裁判所第6民事部は控訴棄却判決を言い渡した(大阪高裁平成31年(ネ)第345号)。
最高裁判所第三小法廷は上告を棄却する決定をし、国への損害賠償請求は認められないまま確定した(最高裁令和元年(オ)第1361号)。
参考リンク
参考文献
袴田事件(最高裁差戻し)と布川事件(国賠勝訴)を巻頭特集。甲山事件・小石川事件・天竜林業高校事件・倉敷民商事件・和歌山毒カレー事件なども収録。燦燈出版。
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