東京都日野市保育園暴行冤罪事件
匿名(当時30代の元保育士男性)
東京都日野市の認可保育園で保育士として働いていた男性は、2020年に園児の体を揺さぶってけがをさせたとして、2023年2月に暴行・傷害の疑いで逮捕された。取調べで警察官から「99.9%勝てないんだよ」などと自白を促すような発言を受けたと訴え、不安を感じた男性は黙秘するようになった。翌月、傷害罪等で起訴された(求刑 懲役1年)。
起訴後、弁護人は繰り返し保釈を請求したが、裁判所は「証拠を隠滅すると疑うに足りる理由がある」として1〜3回目の請求をいずれも却下。2023年12月の初公判を経て、4回目の請求でようやく保釈が認められたが、身柄拘束は逮捕から計294日に及んだ。
逮捕の根拠は、暴行を目撃したとする同僚の保育士2人の証言だった。弁護側は公判前整理手続きの段階から、同僚らのLINEデータの開示を繰り返し求めたが、検察官は「存在しない」と回答し、警視庁にも確認したと説明していた。ところが公判の途中、証人尋問で同僚の1人が警察にスマートフォンのデータをコピーされていたことを明らかにし、証人として出廷した警察官もデータを抽出・保管していたことを認めた。急きょ開かれた3者協議で、検察官は当初「プライバシーに関わる証拠で開示の必要性はない」と抵抗したが、裁判所に促され開示に応じた。
開示されたデータには、警察の聴き取りの前日に同僚2人が交わした、園児の負傷の経緯についてのメモの内容をすり合わせるようなやりとりが含まれていた。2025年4月11日、東京地裁立川支部(中島経太裁判長)は、同僚2人の証言について「都合の良い話をつくり出して共有したと強く疑われる」「証言がすり合わされている疑いがあり、信用性は大きく損なわれている」と述べ、犯行を直接裏付ける証拠もないとして無罪を言い渡した。検察は控訴せず、無罪が確定した。
無罪確定から5か月、男性は保育士の仕事を失い、人と会うことが怖くなるなど、事件前の生活を取り戻せずにいる。2025年10月2日、男性は、無罪の決め手となった証拠の存在を明かされないまま長期勾留されたのは不当だとして、国と東京都に対し計約8600万円余りの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
本件は、目撃証言のみに依拠した見込み捜査、検察による証拠不開示、否認・黙秘を理由とした長期の身柄拘束(人質司法)という、複数の構造的問題が重なった事案である。東京高裁の元裁判長は、証拠不開示について「違法」と断じ、290日超の勾留についても「異常な長さ」であり、軽微な傷害事案で有罪でも執行猶予がほぼ確実だったことを踏まえ「不合理」と指摘している。
東京都日野市の認可保育園で保育士として働いていた男性は、2020年に園児の体を揺さぶってけがをさせたとして、2023年2月に暴行・傷害の疑いで逮捕された。取調べで警察官から「99.9%勝てないんだよ」などと自白を促すような発言を受けたと訴え、不安を感じた男性は黙秘するようになった。翌月、傷害罪等で起訴された(求刑 懲役1年)。 起訴後、弁護人は繰り返し保釈を請求したが、裁判所は「証拠を隠滅すると疑うに足りる理由がある」として1〜3回目の請求をいずれも却下。2023年12月の初公判を経て、4回目の請求でようやく保釈が認められたが、身柄拘束は逮捕から計294日に及んだ。 逮捕の根拠は、暴行を目撃したとする同僚の保育士2人の証言だった。弁護側は公判前整理手続きの段階から、同僚らのLINEデータの開示を繰り返し求めたが、検察官は「存在しない」と回答し、警視庁にも確認したと説明していた。ところが公判の途中、証人尋問で同僚の1人が警察にスマートフォンのデータをコピーされていたことを明らかにし、証人として出廷した警察官もデータを抽出・保管していたことを認めた。急きょ開かれた3者協議で、検察官は当初「プライバシーに関わる証拠で開示の必要性はない」と抵抗したが、裁判所に促され開示に応じた。 開示されたデータには、警察の聴き取りの前日に同僚2人が交わした、園児の負傷の経緯についてのメモの内容をすり合わせるようなやりとりが含まれていた。2025年4月11日、東京地裁立川支部(中島経太裁判長)は、同僚2人の証言について「都合の良い話をつくり出して共有したと強く疑われる」「証言がすり合わされている疑いがあり、信用性は大きく損なわれている」と述べ、犯行を直接裏付ける証拠もないとして無罪を言い渡した。検察は控訴せず、無罪が確定した。 無罪確定から5か月、男性は保育士の仕事を失い、人と会うことが怖くなるなど、事件前の生活を取り戻せずにいる。2025年10月2日、男性は、無罪の決め手となった証拠の存在を明かされないまま長期勾留されたのは不当だとして、国と東京都に対し計約8600万円余りの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。 本件は、目撃証言のみに依拠した見込み捜査、検察による証拠不開示、否認・黙秘を理由とした長期の身柄拘束(人質司法)という、複数の構造的問題が重なった事案である。東京高裁の元裁判長は、証拠不開示について「違法」と断じ、290日超の勾留についても「異常な長さ」であり、軽微な傷害事案で有罪でも執行猶予がほぼ確実だったことを踏まえ「不合理」と指摘している。
- 事件発生
- 2020年
- 被告人
- 匿名(当時30代の元保育士男性)
- 判決
- 傷害罪等で起訴(求刑 懲役1年)→ 一審:無罪 → 検察は控訴せず確定。
- 現在のステータス
- 無罪確定
- 冤罪の原因
- 人質司法、証拠開示の問題、目撃証言の問題、被害者・第三者の偽証、自白強要
タイムライン
日野市の認可保育園で、当時勤務していた男性保育士が園児の体を揺さぶってけがをさせたとされる。
警視庁が男性を逮捕。取調べで「99.9%勝てない」などと自白を促すような発言を受けたとされ、不安を感じた男性は黙秘するようになった。
傷害罪等で起訴された(求刑 懲役1年)。
弁護人が保釈を請求したが、裁判所は「証拠を隠滅すると疑うに足りる理由がある」として却下した。その後の2回目・3回目の請求も退けられた。
初公判が開かれた後、4回目の保釈請求でようやく保釈が認められた。身柄拘束は逮捕から計294日に及んだ。
公判の途中で、検察が「存在しない」としていた同僚2人のLINEデータが開示され、園児の負傷経緯についての証言をすり合わせるようなやりとりが判明。裁判所は同僚2人の証言の信用性を否定し、犯行を直接裏付ける証拠もないとして無罪を言い渡した。検察は控訴せず確定。
無罪の決め手となった証拠の存在を明かされないまま長期勾留されたのは不当だとして、国と東京都に対し計約8600万円余りの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。