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白龍町マンション建設反対弾圧事件

奥田恭正

冤罪無罪確定

名古屋市瑞穂区白龍町の低層住宅地に、突如15階建て高層マンションの建設計画が持ち上がった。周辺住民は「名古屋白龍 住環境を守る会」を結成して反対運動を展開し、地元で薬局を経営する奥田恭正さんがそのリーダー役を担った。マンション業者は住民との協議に応じないまま工事を強行し、住民が反対活動をするたびに警察へ通報していたとされる。

2016年10月7日、奥田さんが建設現場の入口付近で工事の様子を見守っていたところ、現場監督が奥田さんに近づいて抱きかかえるような体勢になり、奥田さんがこれを避けようと身をよじった際、現場監督は大きくよろけてダンプカーに背中をぶつけた。現場監督は「奥田さんに両手で突き飛ばされた」と警察に通報し、奥田さんはその場で現行犯逮捕され、14日間にわたり勾留されたうえ暴行罪で起訴された。勾留期間満了直前には、自宅と経営する薬局の捜索・差押えも行われた。

刑事裁判では、現場監督の証言が「両手で胸を突かれた」「スマホを持ったまま両手を伸ばして突かれた」などと変遷を重ねた一方、現場に常駐していた警備員の証言も曖昧だった。弁護側の申請により画像分析の専門家(東京歯科大学・橋本正次教授)が鑑定人に採用され、防犯カメラの映像を精査した結果、現場監督が主張するような動作は奥田さんに認められず、むしろ現場監督が自ら不自然によろけたことが裏付けられた。2018年2月13日、名古屋地裁は現場監督・警備員の証言を「あいまいで信用できない」として奥田さんに無罪を言い渡し、検察は控訴せず無罪が確定した。皮肉にも、マンションは無罪判決の直後、同年3月に完成した。

無罪確定後も、対応は謝罪とはほど遠いものだった。愛知県警瑞穂署に謝罪を求めても、刑事課長らから「当時の捜査に間違いはなかった」などと取り合われなかったという。奥田さんは、違法な逮捕・勾留・起訴による精神的苦痛について国・愛知県・マンション業者・現場監督を相手取るとともに、捜査の過程で採取されたDNA型・指紋・顔写真データの抹消を求めて提訴した。名古屋地裁は2022年1月18日、無罪確定後もこれらのデータを保有し続けることの違法性を認め、全国で初めてデータ抹消を命じる判決を言い渡した。2024年8月30日の名古屋高裁判決(長谷川恭弘裁判長)はこれを支持し、「無罪とされたのにもかかわらず…データが捜査機関に保管されていることは法の下の平等にも反する」などと違憲性を指摘したうえ、事件を仕組んだとされるマンション業者と現場監督に対して220万円の損害賠償の支払いも命じた。国はこの判決を不服として上告せず、データ抹消命令は確定した一方、業者側は上告した。

なお、マンション業者が建設現場に設置した防犯カメラをめぐっても、住民がプライバシー侵害を訴えた別訴訟があり、2019年9月5日の名古屋地裁判決は、嫌がらせ目的が疑われるダミーカメラの設置について業者に5万円の支払いを命じ、確定している。

本件は、住民運動のリーダーという特定の個人を狙い、企業と警察・検察が結託して軽微な事案をことさらに刑事事件化し、身柄拘束・家宅捜索という重い手段で運動そのものを萎縮させようとした構造的な問題を示す事例である。加えて、無罪確定後も長期間にわたり生体データが捜査機関に保管され続けた点は、刑事手続を離れた後の権利侵害の継続という、より広い論点も提起している。

逮捕年
2016
無罪確定年
2018
期間
2年
確定判決
起訴(暴行罪)→ 一審:無罪 → 検察は控訴せず確定。
都道府県
愛知県
地域
中部
捜査機関
愛知県警
時代
現代
刑事手続き進行度
捜査
逮捕
起訴
一審
控訴審
上告審
確定
服役
再審
逮捕勾留起訴一審無罪確定一審で無罪→検察が控訴せず確定
通過有罪等無罪等進行中

名古屋市瑞穂区白龍町の低層住宅地に、突如15階建て高層マンションの建設計画が持ち上がった。周辺住民は「名古屋白龍 住環境を守る会」を結成して反対運動を展開し、地元で薬局を経営する奥田恭正さんがそのリーダー役を担った。マンション業者は住民との協議に応じないまま工事を強行し、住民が反対活動をするたびに警察へ通報していたとされる。 2016年10月7日、奥田さんが建設現場の入口付近で工事の様子を見守っていたところ、現場監督が奥田さんに近づいて抱きかかえるような体勢になり、奥田さんがこれを避けようと身をよじった際、現場監督は大きくよろけてダンプカーに背中をぶつけた。現場監督は「奥田さんに両手で突き飛ばされた」と警察に通報し、奥田さんはその場で現行犯逮捕され、14日間にわたり勾留されたうえ暴行罪で起訴された。勾留期間満了直前には、自宅と経営する薬局の捜索・差押えも行われた。 刑事裁判では、現場監督の証言が「両手で胸を突かれた」「スマホを持ったまま両手を伸ばして突かれた」などと変遷を重ねた一方、現場に常駐していた警備員の証言も曖昧だった。弁護側の申請により画像分析の専門家(東京歯科大学・橋本正次教授)が鑑定人に採用され、防犯カメラの映像を精査した結果、現場監督が主張するような動作は奥田さんに認められず、むしろ現場監督が自ら不自然によろけたことが裏付けられた。2018年2月13日、名古屋地裁は現場監督・警備員の証言を「あいまいで信用できない」として奥田さんに無罪を言い渡し、検察は控訴せず無罪が確定した。皮肉にも、マンションは無罪判決の直後、同年3月に完成した。 無罪確定後も、対応は謝罪とはほど遠いものだった。愛知県警瑞穂署に謝罪を求めても、刑事課長らから「当時の捜査に間違いはなかった」などと取り合われなかったという。奥田さんは、違法な逮捕・勾留・起訴による精神的苦痛について国・愛知県・マンション業者・現場監督を相手取るとともに、捜査の過程で採取されたDNA型・指紋・顔写真データの抹消を求めて提訴した。名古屋地裁は2022年1月18日、無罪確定後もこれらのデータを保有し続けることの違法性を認め、全国で初めてデータ抹消を命じる判決を言い渡した。2024年8月30日の名古屋高裁判決(長谷川恭弘裁判長)はこれを支持し、「無罪とされたのにもかかわらず…データが捜査機関に保管されていることは法の下の平等にも反する」などと違憲性を指摘したうえ、事件を仕組んだとされるマンション業者と現場監督に対して220万円の損害賠償の支払いも命じた。国はこの判決を不服として上告せず、データ抹消命令は確定した一方、業者側は上告した。 なお、マンション業者が建設現場に設置した防犯カメラをめぐっても、住民がプライバシー侵害を訴えた別訴訟があり、2019年9月5日の名古屋地裁判決は、嫌がらせ目的が疑われるダミーカメラの設置について業者に5万円の支払いを命じ、確定している。 本件は、住民運動のリーダーという特定の個人を狙い、企業と警察・検察が結託して軽微な事案をことさらに刑事事件化し、身柄拘束・家宅捜索という重い手段で運動そのものを萎縮させようとした構造的な問題を示す事例である。加えて、無罪確定後も長期間にわたり生体データが捜査機関に保管され続けた点は、刑事手続を離れた後の権利侵害の継続という、より広い論点も提起している。

事件発生
2016
被告人
奥田恭正
判決
起訴(暴行罪)→ 一審:無罪 → 検察は控訴せず確定。
現在のステータス
無罪確定
冤罪の原因
思想弾圧、目撃証言の問題、被害者・第三者の偽証

タイムライン

事件不利有利手続事後
2016.07マンション工事着工・住民が反対運動を開始

名古屋市瑞穂区白龍町で15階建て高層マンションの建設が着工。周辺住民が「名古屋白龍 住環境を守る会」を結成し、反対運動を始めた。奥田恭正さんがリーダー的存在だった。

2016.10.07奥田さんが現行犯逮捕・勾留

建設現場入口付近で工事を見守っていた奥田さんに現場監督が近づき抱きかかえるような体勢になった際、現場監督が大きくよろけてダンプカーに背中をぶつけた。現場監督が「両手で突き飛ばされた」と通報し、奥田さんはその場で現行犯逮捕され、14日間勾留されたうえ暴行罪で起訴された。勾留期間満了直前には自宅と経営する薬局の捜索・差押えも行われた。

2018.02.13名古屋地裁が無罪判決、検察は控訴せず確定

名古屋地裁は、現場監督・警備員の証言を「あいまいで信用できない」とし、防犯カメラ映像とも整合しないとして奥田さんに無罪を言い渡した。検察は控訴せず、無罪が確定した。

2018.03マンションが完成

無罪判決の直後、反対運動の対象だった高層マンションが完成した。

2018国・県・業者らを相手に提訴

奥田さんは、違法な逮捕・勾留・起訴による精神的苦痛について国・愛知県・マンション業者・現場監督を相手取り、あわせて捜査で採取されたDNA型・指紋・顔写真データの抹消を求めて名古屋地裁に提訴した。

2019.09.05防犯カメラ訴訟で名古屋地裁が5万円の支払いを命令(確定)

マンション業者が建設現場に設置した防犯カメラをめぐる別訴訟で、名古屋地裁は、嫌がらせ的意図で設置されたと疑われるダミーカメラについて業者に5万円の支払いを命じ、判決が確定した。

2022.01.18名古屋地裁がDNA型等データの抹消を命令(全国初)

名古屋地裁は、無罪確定後も捜査機関がDNA型・指紋・顔写真データを保有し続けることの違法性を認め、全国で初めてデータ抹消を命じる判決を言い渡した。

2024.08.30名古屋高裁がデータ抹消命令を維持、業者・現場監督に220万円の賠償命令

名古屋高裁(長谷川恭弘裁判長)は一審のデータ抹消命令を支持し、無罪確定後のデータ保管継続について「正当性はなく人格権を侵害している」「法の下の平等にも反する」と違憲性を指摘。あわせてマンション業者と現場監督に220万円の損害賠償の支払いを命じた。国は上告せずデータ抹消命令が確定したが、業者側は上告した。

裁判長:長谷川恭弘

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