技術理解の不足
技術理解の不足とは
IT技術、暗号技術、ソフトウェア工学などの専門分野について、捜査機関・検察・裁判所が十分な理解を持たないまま刑事処罰を行う問題。特にデジタル技術の発展が速い分野では、法律と技術のギャップが拡大しやすい。
Winny事件
ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が著作権法違反の幇助で起訴された事件は、「中立的技術の開発」と「犯罪の幇助」の境界が争われた。捜査機関はP2P技術の本質(適法用途も違法用途も可能な中立的技術)を十分に理解しないまま立件した。最高裁は2011年に無罪を確定させた。
Coinhive事件
Webサイトにマイニングスクリプトを設置したことが「不正指令電磁的記録保管罪」に問われた。広告と同等のリソース消費であり、ユーザーへの実害が極めて小さいことを考慮すれば、「不正」とまで言えるかが争点だった。最高裁は2022年に無罪とした。
構造的な問題
技術の進化に法律が追いつかない中で、捜査機関が既存の法律を「拡大解釈」して対応しようとする傾向がある。結果として、開発者やエンジニアが萎縮し、技術革新が阻害されるリスクがある。Winny事件の金子勇氏は無罪確定後の2013年に急性心筋梗塞で死去した。42歳だった。
用語解説
P2PPeer to Peer。サーバーを介さずコンピュータ同士が直接通信する技術。Winnyが採用
暗号資産マイニング暗号通貨の取引検証をコンピュータの計算能力で行うこと。Coinhive事件の対象
技術的中立性技術自体は善悪を持たず、使い方次第で適法にも違法にもなるという考え方
制度改革の動向
デジタル技術に関する捜査・司法の専門性向上が課題。技術者コミュニティとの対話も重要。